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AIでBCPはどこまで変わるか

AIでBCPはどこまで変わるか

2026/07/03. AIBCPBCP5.0KPMGSONAE-AI東京商工会議所

「AIを使えばBCPが強くなる」は、半分正しくて半分危うい。公式情報をもとに、使えるところと気をつけるべきところを、正直に整理しました。

結論

AIはBCPを強化できます。
ただし、AIへの依存そのものが新たなBCPリスクになります。

KPMGは2026年2月の論考でAIをBCPの「便利な道具」と「新たなリスク源」の両面で整理し、BCPは4.0から5.0へ移行しつつあると論じています ※1 。一方、東京商工会議所は2026年1月にBCP策定支援AI「SONAE-AI」の提供を開始し、策定という準備コストを下げる具体的な手段が生まれました ※2 。

この2つの事実が、AI時代のBCPを考えるうえでの背骨になります。便利な道具として使いながら、AI停止というリスクも想定する——その両方を考慮することが、次世代BCPの要件です。

参照:KPMG「AIはBCM/BCPをどう変えるのか?~BCPは4.0から5.0へ」2026年2月 / 東京商工会議所「SONAE-AI」

index

安否確認は「AIの代替対象」ではなく、「AIが使う一次情報基盤」である

AIがBCPで機能するには、正確なリアルタイムデータが必要です。安否コールの運用現場から見えてきた、初動判断に本当に必要な情報と、BCP形骸化の実態をお伝えします。

01 誰が無事か
従業員の安否状況。「出勤可能」「負傷」「連絡不通」の3分類が初動判断で最優先に必要な情報です。
02 誰が出勤できるか
交通手段・居住エリア・家族状況をもとにした参集可否。人員判断の基礎データになります。
03 どの拠点が機能しているか
拠点別の被害状況と設備稼働状況。代替拠点・縮退運転の判断に直結する情報です。

BCP形骸化の実態パターン ——「持っているBCP」が有事に動かない、3つのズレ

安否コールの導入支援を通じて繰り返し見てきたパターンです。

① 連絡網は存在するが更新されていない
入退社・異動のたびに連絡網を更新する運用が回っておらず、発令時に「つながらない番号」が出ます。

② BCP本文はあるが初動担当者が読んでいない
訓練を経ていないBCPは文書としてのみ存在し、担当者がいざというときに「何をすれば良いか分からない」という事態につながります。

③ 安否確認は導入済みだが拠点被害把握が別管理
「誰が無事か」は把握できるが「どの拠点がいつ再開できるか」が別の集計になっており、対策本部判断が遅れます。

AIが本来できること・できないこと

——AIは「集められたデータ」を活かす側。収集は人とシステムの仕事

AIが災害時の意思決定を支援できるのは、正確な一次情報がリアルタイムで揃っている場合に限られます

例えば安否確認の回答データをAIに渡せば、「出勤可能な人員数」「対応不可拠点のリスト」「優先対応が必要な未回答者」を瞬時に整理できます。しかし、その前提として「災害直後に全従業員から回答を集められるシステム」が動いている必要があります。収集基盤なきAI活用は成立しません。安否コールが整える「一次情報の収集」こそが、AI時代のBCP起点です。

AIを使うほど必要になる、「AIが止まった時の設計」

KPMGはAIを「便利な道具」として使う視点の前に、「新たなリスク源」としての視点を置いています。活用を進める前に、このリスク構造を把握しておくことが重要です※1。

01 AI停止シナリオをBCPに明記する
重要業務のどこにAIが入っているかを棚卸しし、「AIが止まった瞬間に停止する業務」「手作業で何時間耐えられるか」「縮退運転のラインはどこか」を事前に書き出すことが求められます。AIへの依存が高まるほど、このシナリオ設計が重要になります。
02 誤判断を検知・修正する体制を持つ
AIは誤った情報を自信ありげに出力することがあります。重要な意思決定にAIを使う場合、誰が誤情報を検知し、誰が止め、誰が正すのかを明文化することが必要です。重要判断の二重チェックを標準化することが推奨されています。
03 AI導入は変更管理とセットで設計する
重要業務にAIを使うほど、システム更改と同レベルの変更管理が必要になります。「AIを止めた後にどう回すか」をBCPにあらかじめ書いておくこと——これが「BCP5.0」の核心のひとつです。AIは入れるだけでなく、出口も設計する必要があります。

出典:KPMG「AIはBCM/BCPをどう変えるのか?~BCPは4.0から5.0へ」(2026年2月24日) / 世界経済フォーラム「Global Risks Report 2026」(KPMG論考内引用)

では、AIはBCPのどこで使えるのか

リスクを理解したうえで、AIが実際にBCPの弱点を補える領域を整理します。主な公式事例と、実務応用として有望な構想段階の事例に分けて整理します。

SONAE-AI ―AIがBCPの下書きを自動生成する(東京商工会議所 公式サービス)

2026年1月、東京商工会議所がBCP策定支援AI「SONAE-AI(ソナエアイ)」の提供を開始しました ※2 。企業情報(URLやファイル)をアップロードすると、AIが事業内容・拠点情報を解析し、東京商工会議所の「オールハザード型BCP策定ガイド」に準拠したBCP案の下書きを自動生成します。AIアシスタントとの対話形式で加筆・修正でき、BCP未策定企業の「人も時間もない」という典型課題に対し、突破口となる設計です。

ただし、生成されたBCP案はあくまで下書きです。人間が確認・修正することが前提の伴走支援型であり、AIが完成品を作るわけではありません。

  • 企業情報を投入するだけでBCP案の初稿が自動生成される。「ゼロから書く」という最初の壁を取り除く。
  • 東京商工会議所の「オールハザード型BCP策定ガイド」準拠のため、標準的な骨格と網羅性が担保された状態で始められる。
  • AIアシスタントとの対話で加筆・修正ができる伴走支援型。専任担当者がいない中小企業でも活用しやすい。

安否コールとの接点
SONAE-AIはBCPの「策定フェーズ」を支援します。BCP本文に安否確認の手順を書く際、安否コールの実際の操作手順をそのまま組み込むことで「読むだけで動けるBCP」が作りやすくなります。策定AIと安否確認システムをセットで整備することが、実効性の高いBCPへの現実的なルートです。

出典:東京商工会議所「SONAE-AI」公式ページ / 日本商工会議所 ニュース(2026年1月)

公式情報で確認できる方向性

KPMG BCP5.0 — AI活用の方向性
需給・事業判断をデータドリブンへ

KPMGはAIが「見える化→自動アラート→シミュレーション」のサイクルを通じ、過去の販売実績・季節要因・サプライチェーン情報から需要を予測し、代替供給計画や優先出荷計画の立案を支援できると論じています。事業継続の判断を「勘」からデータドリブンへ変えていく方向が示されています。

出典:KPMG「AIはBCM/BCPをどう変えるのか?~BCPは4.0から5.0へ」2026年2月。人員データ(安否確認)×需給データの統合が判断精度向上の鍵。

KPMG BCP5.0 — 訓練・更新の効率化
AIでBCPをスプリント型で更新し続ける

BCPが形骸化する最大の要因のひとつが「更新されないまま放置されること」です。KPMGはAIを使ったBCPの継続的更新を推奨しており、組織変更・拠点増減・新リスクへの対応を反映した訓練シナリオをAIで定期生成し、専門家がレビューする「スプリント型更新」の組み込みが有効とされています。

文書化の効率化+定期訓練の組み合わせが「知っているBCP」から「使えるBCP」への鍵。安否コールは定期訓練機能を標準搭載。

実務応用として有望(構想・研究段階)

構想・研究段階 ——文書化の効率化
生成AIで「被災後レポート」を速く作る

安否確認データを生成AIに渡すと、被害状況の要約・出勤可能人員の集計・優先対応の整理を自動で行い、対策本部が即座に読める形に変換できます。意思決定と事業再開判断を早める効果が期待できます。BCP本体や訓練シナリオの初稿を生成AIで作成し、専門家がレビュー・修正する手法も一部で実践されています。

安否確認データにはセンシティブな個人情報が含まれるため、AI連携には権限管理・利用規約確認が前提です。

構想・研究段階 ——人員・参集の予測
居住地・交通情報から「誰がいつ動けるか」を推定する

職員の居住地・交通手段・家族状況・リアルタイム交通情報を組み合わせて、「いつ・誰が・どのくらいで現場に来られるか」をAIが推定するモデルが、医療機関のBCPで検討されています。企業BCPへの応用では、参集可能人数の予測をもとに代替シフト案を自動提案する方向が期待されています。

実装コストと精度のバランスが現時点での課題。まず安否確認で「誰が無事か」を把握できる基盤が前提です(※7)。

AI活用の前に整えるべき、一次情報収集の基盤

AIがBCPで機能するには、正確なデータが集まる基盤が必要です。そのデータには従業員の位置情報・健康状態・家族情報が含まれるため、「どう収集し、どう守るか」というデータガバナンスが前提条件になります。

汎用AIサービスを使う場合の検討ポイント ——個人情報をAIに渡す前に確認すべきこと
BCPに関わるデータには、従業員の位置情報・健康状態・家族情報・連絡先が含まれます。汎用AIサービスにこれらを入力する場合、情報漏洩リスクへの対処・社内セキュリティ規程の整備・利用規約の精査・法令順守体制の構築など、相当な準備と継続的なコストが発生することがあります。また「個人情報をAIに渡したくない」という従業員の声が出ることも、現実的な課題として想定しておく必要があります。
安否コールの設計 ——安全な一次情報基盤として

安否コールは、管理者権限や設定に応じて個人情報の表示を制御できる設計です。メールアドレスや電話番号などを非表示に設定でき、仕様変更案内でも緊急連絡先の非表示設定・メールアドレス非表示オプションが確認できます ※5a 。ISO/IEC 27001・プライバシーマーク取得のもと情報を厳格に管理しており、従業員が安心して登録できる土台になっています。

AIと連携する場合でも、安全に管理されたデータ基盤の上でのみ、適切な活用が成立します。

  • ISMS ISO/IEC 27001
  • プライバシーマーク
  • 個人情報の表示制御
  • 緊急連絡先の非表示設定

AIはBCPの弱点を補う道具になれます。
でも、AIそのものがBCPの新しい弱点にもなりえます。
どちらも正しい。だから、両方を考えることが必要です。

AIは収集基盤を代替するのではなく、収集された一次情報を活用する側に向いています。
正確なデータを集める基盤と、そのデータを守る設計。
安否コールは、AI時代のBCPを支える一次情報インフラです。

BCP×AIについて、よくいただく質問

経営者・BCP担当者・情報システム部門からよくいただく疑問を、出典とともに整理しました。

  • QAIでBCPはどこまで変わりますか?

    A
    「策定・文書化・更新」という準備コストを大幅に下げる可能性があります。ただし、有事の対応を自律的に行うわけではありません。
    東京商工会議所のSONAE-AIは、企業情報をもとにBCP案の下書きを自動生成し、策定の最初の壁を取り除きます。一方でKPMGは、AIをBCPに組み込むほど「AIが止まったときの業務影響」という新リスクが生まれると指摘しています。便利な道具として使いながら、AI停止シナリオも想定することが、AI時代のBCPの要件です(2026年2月時点)。
    参照:KPMG「AIはBCM/BCPをどう変えるのか?~BCPは4.0から5.0へ」2026年2月 / 東京商工会議所「SONAE-AI」
  • QSONAE-AIとはどのようなサービスですか?

    A
    東京商工会議所が2026年1月に提供を開始したBCP策定支援AIです。
    企業情報をアップロードすると、AIが事業内容・拠点情報を解析し、東京商工会議所の「オールハザード型BCP策定ガイド」に準拠したBCP案の下書きを自動生成します。AIアシスタントとの対話形式で加筆・修正でき、BCP未策定の中小企業が「人も時間もない」という状況を突破する入口として設計されています。生成されたBCP案は人間が確認・修正することが前提で、AIが完成品を作るわけではありません。
    参照:東京商工会議所「SONAE-AI」公式ページ / 日本商工会議所 ニュース(2026年1月)
  • QAIがBCPにとってリスクになるとはどういうことですか?

    A
    KPMGは「AIはBCPの道具であると同時に、新たなリスク源でもある」と整理しています。
    重要業務にAIが組み込まれると「AIが止まった瞬間に止まる業務」が生まれます(AI停止リスク)。またAIが誤った情報を出力した場合の検知・修正体制も必要です(誤判断リスク)。さらに重要業務へのAI導入はシステム更改と同レベルの変更管理が求められます。KPMGはこれらをBCPに組み込むことを推奨しており、これがBCP5.0の核心です。
    参照:KPMG「AIはBCM/BCPをどう変えるのか?~BCPは4.0から5.0へ」2026年2月
  • Q安否確認システムはAIとどのように連携できますか?

    A
    安否確認で集まるデータは、AIが活用できるリアルタイムの一次情報です。
    誰が無事か、誰が出勤できるか、どの拠点に影響が出ているかという情報を、AIが要約・分類・優先順位付けする入力として使えます。ただし、安否確認データには位置情報・健康状態・家族情報などのセンシティブな個人情報が含まれるため、AI連携には権限管理・利用規約の確認・法令順守が前提です。現時点ではAIによる高度な自動分析は発展途上であり、まず安全なデータ収集基盤を整えることが第一条件です。
  • QBCP策定でAIを使うとき、個人情報の扱いはどうすればよいですか?

    A
    汎用AIサービスに個人情報を入力する場合は、事前の整備が必要です。
    BCPデータには従業員の位置情報・健康状態・家族情報・連絡先が含まれます。情報漏洩リスクへの対処・社内セキュリティ規程の整備・利用規約の精査・法令順守体制の構築など、相当な準備と継続的なコストが発生することがあります。安否確認システムを活用する場合は、ISO/IEC 27001・プライバシーマーク等の認証取得と、管理者権限に応じた個人情報の表示制御ができるシステムを選ぶことが、安全な基盤の条件です。
  • QBCP形骸化を防ぐためにAIはどう役立ちますか?

    A
    AIはBCPの「文書化・更新コスト」を下げることで、BCPを維持しやすくします。
    SONAE-AIのような自動ドラフト生成は策定の入口として機能します。また訓練シナリオや更新作業に生成AIを使うことで、BCPを「生きた文書」として保つコストを減らせます。ただし、どれだけ優れたBCPを文書として持っていても、定期訓練なしには有事に機能しません。安否コールは定期訓練機能を標準搭載しており、本番と同じ動線で繰り返し体験できます。

「AI時代でも安否確認システムは必要ですか?」

AIと安否確認システムの役割の違いを、法律・物理空間・人間の心理・通信インフラの4軸で整理したガイドです。「AIで代替できるのでは?」という疑問をお持ちの方に、こちらも合わせてお読みください。

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出典・参照一覧

※1 KPMG「AIはBCM/BCPをどう変えるのか?~BCPは4.0から5.0へ」2026年2月24日 — KPMG Japan
※2 東京商工会議所「SONAE-AI(ソナエアイ)」BCP策定支援システム 2026年1月提供開始 — 東京商工会議所公式ページ
※3 日本商工会議所「AIを活用したBCP策定支援システムを提供開始」— ab.jcci.or.jp(2026年1月)
※4 内閣府 事業継続ガイドライン — 内閣府防災情報ページ
※5a 安否コール 個人情報の表示制御(緊急連絡先の非表示設定・メールアドレス非表示オプション)— 安否コール バージョン6.5 更新情報ページ
※5b 安否コール ISO/IEC 27001 JIS Q 27001 認定事業者(認定番号IA165279)・JIS Q 15001 取得事業者(登録番号10824463)— 安否コール公式サイト
※6 世界経済フォーラム「Global Risks Report 2026」— KPMG論考(※1)内で引用されている文献です。
※7 参集予測AI・病院BCPへのAI活用構想 — 医療機関のBCP分野における研究・実践事例をもとに整理。個別の実装状況は組織・システムにより異なります。
運営会社 株式会社アドテクニカ

「世界中のコミュニケーションをクラウドで最適に」することをミッションとして掲げ、2000社以上の法人向けのデジタルコミュニケーションとデジタルマーケティング領域のクラウドサービスの開発提供を行う防災先進県静岡の企業。1977年創業後、インターネット黎明期の1998年にドメイン取得し中堅大手企業向けにインターネットビジネスを拡大。”人と人とのコミュニケーションをデザインする”ためのテクノロジーを通じて、安心安全で快適な『心地良い』ソリューションを提供している。

事業内容
デジタルマーケティング支援
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